Ohさんはすごかった

ひと昔前のこと、ビデオデッキもビデオカメラもない時代があった。何かを画像として記録するなら、フィルム式のカメラで撮るしかなかった。思えば1977年のある日のこと。プロ野球、巨人 vs ヤクルト戦のテレビ放送でのことだった。かの王貞治が必撃の一打で、ハンク・アーロンのホームラン記録を抜く歴史的瞬間をカメラで記録しようという男がいた。テレビの前に陣取り、椅子を置きカメラをその上に固定した。ヤクルトの鈴木投手が振りかぶった。バットの真ん中、見事ボールを捕えた。グングンとボールが観客席に飛び込んでいく。間髪を入れず、「カシャ!」。男はシャッターを押した。「ひひー、しめしめ」。ドヤ顔の男は「これで世紀の瞬間は俺のものだ!」とそそくさとカメラ屋に現像しに行った。写真が出来上がった。アレー、男はため息。"Oh, no!"  写っていたのはお祝いの「くす玉」だった。

さて、"oh" は「間投詞」に分類されるのであろうが、感情や動作が故意ではない、正直に、自然に出たことを伝えるという、意外にもすごい役割があったのだ。Oh, I'm sorry!(すっ、すみません) Oh, dear!(あらまあ)...  なんてのがそれだ。電車で人に肩が当たったら Oh, I'm sorry. とohをつけて言うと、穏便に済むことだろう。野球界の Oh は主役であったが、英語の oh には助演賞が与えられるだろう。